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猫の慢性腎臓病の治療法について

2021年01月30日

慢性腎臓病というのは「3ヶ月以上継続する、片方または両方の腎臓の機能的・構造的異常」と定義されています。別の言い方をすると、「治療できない(不可逆的)ダメージを受け、腎臓の機能が低くなっている状態」です。

慢性腎臓病は徐々に進行することが多々あり、猫を外から見ているだけではなかなか気づけないかもしれません。特に最初の段階では問題(症状)が見られないことが大半なので、「無症状で元気で食欲がある」からといって「慢性腎臓病ではない」とは限りません。

一度失われた腎臓の能力は二度と戻ることは無いため、早めの発見や治療が大切です。いわゆる「猫の慢性腎臓病」の原因ははっきりとしないことがほとんどですが、腎機能を低下させる明確な原因としては、腎臓腫瘍、細菌感染、腎結石・尿管結石などがあげられます。また、猫に多い肥大型心筋症や歯肉口内炎なども結果的に慢性腎不全を発症させる要因になりえます。治療としては、原因がはっきりしていて治せるものであれば原因治療、原因が治せないものや「猫の慢性腎臓病」に対しては、脱水に対するケア、薬物療法、食事療法などが挙げられます。

 

猫の腎臓はどのように機能しているか

腎臓は、大きく分けて、ろ過、再吸収、内分泌、の能力を持っています。具体的に言うと、身体の中の老廃物を排出する、血圧を整える、赤血球の増殖と分化を進める、身体のイオンや水分量のバランスを保つといった働きがあります。

 

慢性腎臓病とは

冒頭でご説明したとおり、腎臓の機能が低下している状態が慢性腎臓病です。血圧調節が上手にできなくなることで起きる(腎性)高血圧、赤血球の増殖・成熟が不十分になることや胃腸粘膜障害などが原因で起きる貧血、元々は尿中に排泄されるべき物質が血液の中に残留することで起きる尿毒症。体内水分量を持続できないことで起きる脱水などが、代表的な症状と言われています。

 

治療法について

症状を和らげ、脱水症状を解決するようにしたり、酸塩基平衡や電解質を整え、栄養状態を改善することを目的とした治療法を行います。

 

薬によって治療出来るのか

実は慢性腎臓病を治す薬はないです。投薬などの内科治療は対症療法として用いられます。具体的には症状を和らげたり脱水の状態の改善したり、内分泌・栄養バランス・電解質・酸塩基平衡の調整をします。治療を進める上では、腎臓へのダメージを最低限にして慢性腎臓病の進行を可能な限り遅らせるよう心がけることが大事です。
顕著なタンパク尿がある(UPC=尿蛋白クレアチニン比の上昇)場合にACE阻害剤やARB製剤を内服したり、腎性高血圧症を認める場合(一般的に最高血圧が160mmHgを上回る場合)に血圧降下剤を内服したりはあります。また血液検査でリンの数値が高い場合はサプリメントの位置付けではありますがリン吸着剤を使用します。

 

食事による治療

治療の中でもっとも効果があると言われているのが食事療法です。多くの場合「低たんぱく食」と表されることが多いのですが、腎臓食では必ずしもたんぱく質だけ抑えれば良いということではありません。腎臓へのケアを考えたときには、可溶性繊維やω-3脂肪酸・抗酸化物質、PO4(リン酸塩)、Na(ナトリウム)の制限、ビタミンB群の添加、カロリー密度の上昇の添加などに加え、猫の場合はK(カリウム)が添加されていることも多々みられます。家で作ることは難しいので、動物病院で購入できる療法食を利用することを推奨します。

 

再生医療による治療

「慢性腎臓病」の治療法のひとつとして、「再生医療」が挙げられます。
しかし、再生医療は慢性腎臓病の治療の根幹をなすものではなく、あくまでも「プラスに働く可能性がある」程度のものであることに留意しなければなりません。実施するばあいには実施している病院の獣医師とその効果の予測について充分話し合い理解し、その上で実施するかを決定する必要があるでしょう。(当院では治療効果についての裏付けが乏しいため、再生医療については実施していません。)