がん治療

がん治療

がん治療

犬のがん

癌が犬の死因の中でトップに…

現在、「がん」は犬の死因の中でもトップになっています。飼育環境の質や獣医療水準の向上などから寿命が延びたことが大きな要因です。家族の一員である愛犬の寿命が延びることは喜ばしいことですが、日常の健康の変化に気をつけ、変化を感じる場合は適切に対処しなければなりません。

人間と同じように日常の運動量・食生活・睡眠・ストレスなどの程度や変化を意識し、異変に気づけるように備えましょう。

 

1.がん検査の流れ

がん(腫瘍)は人間と同じく、どこにでもできる可能性があることをご存知でしょうか?
問診や検査を通じて良性か悪性、体内での広がりや転移の可能性などを調べます。
治療計画を立てるもとになるので、問診や検査は治療において欠かせないステップです。具体的に、どのような検査を行うのか1つずつ紹介します。

1-1.細胞診

注射用の針を用いて、腫瘍から少量の細胞を採取します。採った細胞に色付けを行い、顕微鏡で診ることによって腫瘍の診断を行います。場合によっては、細胞診のみで診断が下るでしょう。「注射用の針」といっても痛みはほぼなく、全身麻酔などを行う必要はないので安心してください。

1-2.レントゲンおよびエコー

身体の表面の腫瘍は容易に視認できますが、内臓や肺にできたものはすぐに確認できません。レントゲンやエコー検査を行い、転移の可能性や広がりなどをチェックします。症例によっては紹介状をお渡しし、大学病院などでCT検査を受けていただく場合もあります。

1-3.血液検査

血液検査を行い、腫瘍による影響や合併症の可能性、麻酔を使用する場合の安全性などを確認します。

1-4.組織生検

細胞診で診断が下せないときに、腫瘍を「組織」として採取して検査します。採取にあたって麻酔や鎮静が必要になるケースもあり、結果が出るまでに数日かかります。検査の結果が出ましたら再度ご来院いただき、獣医師から診断と治療方針を説明します。
腫瘍の特徴や治療におけるメリットとデメリットなどを、極力詳しくお話しします。特定の治療方法を無理強いすることはなく、飼い主さまにご納得いただける方法で治療を進めていただきます。不明点や心配なことがあれば、お気軽にご相談ください。

 

2.治療の流れ

治療は外科手術・抗癌剤・放射線治療を用いて行うのが基本です。
ただ腫瘍の種類によって、効果が見込める治療方法は異なります。
1つずつ詳しく説明します。

2-1.外科手術

外科手術を行い、体内から腫瘍を取り除きます。この段階で完治する可能性もあり、とても大切なプロセスとなります。信頼できる獣医師に、慎重に治療計画を立ててもらったうえで手術を受けましょう。
当院では、できるだけ心身の負担や痛みが生じないよう細心の注意を払って行います。

2-2.抗がん剤

手術後の転移や再発、血液系腫瘍(リンパ腫など)の予防のために行う治療です。
ペットの場合は人間と違って、基本的に入院は必要ありません。外来通院で投与できますので、自宅で普段通りの生活をしていただけます。
ただ、副作用が出る可能性はゼロとは言い切れません。何かあれば飼い主さまの協力のもと、適切な対処を行うことになります。事前に注意点などをお話ししますが、自宅で何か異変があればすぐにご相談ください。

2-3.放射線療法

手術ができない、あるいは手術後に再発の可能性が高いと考えられる部位へ放射線を当てる治療です。
抗がん剤のように全身ではなく、放射線を照射した部位にのみ効果が出るのが特徴です。痛みを抑えるための全身麻酔が必要となりますので、場合によっては紹介状をお渡しして大学病院で治療を受けていただきます。

乳腺腫瘍

特徴

避妊手術を受けていない高齢の雌に多い腫瘍ですが、ごくまれに雄にも発生します。
良性のものと悪性のものがあり、悪性のものを「乳がん」と呼びます。
小型犬では良性と悪性の割合は、良性が6〜7割、悪性が3〜4割ほどとされています。
避妊手術を受けるタイミングも乳腺腫瘍の発症率に大きく影響し、初回生理前の手術で99.5%、2回目生理前の手術で91.5%の予防効果と言われています。3回目の生理(発情出血)を過ぎてからの避妊手術の場合は乳腺腫瘍の発生を抑える効果がかなり低下すると考えられています。

早期発見のサイン

チェックは簡単です。未避妊の犬を飼っている場合には月に1度おなかをなでるついでに乳房をやさしくつまむようにして、しこりの有無を確認します。もし、しこりを見つけたら、小さいうちに診察を受けましょう。悪性の乳ガンの場合は1〜2ヵ月で2倍以上の大きさになる場合もあります。
※自宅でのチェックでは心配という方はお気軽に受付にて乳がんチェック希望とお申し付けください。

治療法

手術によってのみ治療が可能です。
乳腺腫瘍は手術前に良性か悪性かの判定ができないため(悪性を予測することは可能ですが、良性と判断することができません)、切除して病理組織検査で判断されます。

※炎症性乳がんについて
治療法が検討されているものの、基本的には直すことが難しい「炎症性乳がん」というものがあります。気づいたときは通常の乳腺腫瘍と変わりがないことが多いのですが、経過とともに表面がただれるような変化や板状に硬くなる変化が現れ始めます。痛みを伴うことが多く、手術によって劇的な状態の悪化を招くことが知られています。当院でもこれまでに(セカンドオピニオンが多いですが)5例ほど診断しています。その全例で経過から炎症性乳がんを疑い、手術は推奨されないため経過を見ることになりましたが、やはり残念ながら数ヶ月で亡くなります。

肥満細胞腫

特徴

犬の皮膚にできる悪性腫瘍の中でも最も発生率が高い腫瘍が「皮膚肥満細胞腫」です。
皮膚の肥満細胞腫はいわゆる悪性腫瘍とされていますが、悪性度にばらつきがあり、Patnaik分類という方法で悪性度を、グレード1(良)→2(中間)→3(悪)と分類されます。ただしこの分類は手術で摘出後に分かるものであり、手術前に悪性度を決定することはできません。

早期発見のサイン

愛犬をなでていて、体表のどこかに「しこり」や「腫れ」のようなものに触れる時があります。そこから出血したり、蚊に刺された痕のように皮膚の一部が赤く腫れていたりします。
肥満細胞腫は皮膚に出現するときの様子が一様ではなく、「虫刺され」「かさぶた」「しこり」「いぼ」など、見た目での判断が難しいことが多いため、気になるできものを見つけたときには動物病院で針吸引検査(FNA検査)を受けましょう。その場で確定診断できることもあります。

治療法

グレード1〜2であれば適切な摘出手術によって完治が期待できますが、肥満細胞種は全身の至るところで発生するため、顔や足先などに発生する場合は摘出できる範囲に制限があるため、摘出が不可能、マージンの確保が困難、などの理由で、放射線療法、抗がん剤(ビンブラスチン、CCNU、ステロイドなど)、分子標的薬(トセラニブやイマチニブ)などの治療が単独で行われたり、手術と併用されたりします。

口腔(顎)の腫瘍

早期発見のサイン

口の中にしこりが生じ、物を食べにくそうにします。その他に、口臭が強くなる、よだれがでる、口から出血するなどの症状が出ます。

特徴と治療法

悪性の場合は黒色で、口の中の粘膜や舌に発生します。急速に大きくなり、病気の初期にリンパ節や肺に転移する怖い病気です。ガンが疑われる場合には、しこりの部分だけを切り取るのではなく、周りの健康的な組織も含めて切除します。また、顎に転移している場合には顎の骨ごと切断をしなければなりません。そうすると今後、自力ではご飯を食べることが困難になるため人間のサポートが必要となります。

猫のがん

猫は犬よりも悪性になる割合が高い

猫の腫瘍は、犬よりがん(悪性腫瘍)の割合が高いのが特徴です。

腫瘍は、猫が年齢を重ねるほど発生しやすくなります。これは、高齢になれば気力・体力とともに抵抗力も衰え、また細胞も傷みやすくなるのが理由です。腫瘍ができる原因は、老化のほかに、発がん性の化学物質、紫外線、ウイルス、ホルモン、遺伝などが複雑に関係していると考えられます。とくに猫の場合は、犬よりも悪性腫瘍になる割合が高く、猫と犬では悪性・良性の比率や治癒率に違いがあり、どちらかといえば猫の方が深刻ながん(癌)になりやすい傾向があります。

乳がん

早期発見のサイン

猫の乳腺は、通常、前肢の付け根から後肢の付け根にかけて左右4対(計8個)あり、乳腺腫瘍は腹部の乳腺にできやすい傾向があります。

腫瘍がある場合、乳腺全体をそっと触ってみると、1つまたは複数個、硬めのしこりが感じられます。腫瘍がある部分の乳頭が赤く腫れ、黄褐色~黄色の液体がにじみ出ることがあります。

特徴と治療法

腫瘍の大きさは様々で、早期に発見した場合は数ミリ程度ですが、病態が進行するにつれて大きくなります。そして、しばしば表面が潰瘍化し、出血を伴うことがあります。

乳腺腫瘍は、1歳未満で避妊手術を受けることで、その発症をかなり予防することができます。しかし、避妊手術後もまったく発症しないわけではありません。日頃からスキンシップを兼ねて猫のお腹を触って、小さなしこりや腫れがないかチェックし、早期発見に努めましょう。

リンパ腫

早期発見のサイン

乳腺腫瘍は、1歳未満で避妊手術を受けることで、その発症をかなり予防することができます。しかし、避妊手術後もまったく発症しないわけではありません。日頃からスキンシップを兼ねて猫のお腹を触って、小さなしこりや腫れがないかチェックし、早期発見に努めましょう。

特徴と治療法

猫に一番多く見られる癌です。多くは猫白血病ウイルスが原因だと言われています。また、このウイルスがリンパ腫を引き起こすことは明らかになっています。他には猫エイズウイルスにかかっている猫も発症の危険性は高いといえるでしょう。

他のガンのように、自分の細胞がガン化して起こることもあります。

リンパ腫の治療では、一般的に薬による治療をします。抗癌剤による治療で、約60%以上のネコちゃんに体調の改善が見られます。

皮膚がん(扁平上皮がん・繊維肉腫)

早期発見のサイン

白い猫の耳や鼻、皮膚、口腔内に多くみられます。皮膚がただれたり、出血をしたりします。かさぶたができても取れてしまうので血が出てジュクジュクとしています。口にできた場合は食欲が無くなりやがて体力が弱まっていきます。比較的発見しやすいので、少しでも異変を感じたらご相談ください。

特徴と治療法

なるべく早い時期に外科的切除を行います。切除後に放射線療法を実施します。抗ガン剤は効果的ではありません。白い猫は日光の紫外線の日照と関係しているので、あまり屋外に長時間出すことは、子猫の間から気を付けた方が良いとされていますが黒い猫でも発症する場合はあります。