ねこの病気について
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「猫は小さな犬ではない。」獣医師の間で言われる格言があります。この言葉の通り、猫は犬とは異なる体の特徴を持っており、その特徴ゆえに起こる病気も数多くあります。
猫は進化の過程で、少量の水を飲んで濃縮された濃い尿を排泄するという仕組みを獲得しました。また、猫のトイレの感性は人間に近く、ちゃんと「トイレ」に排泄する習慣があります。つまりトイレ環境に不備があると排泄を我慢してしまい、膀胱炎や便秘になりやすくなります。
猫の下部尿路疾患(FLUTD)とは、ねこのおしっこに関わる病気全般を指す言葉で、上記のような猫に特有の排尿事情から引き起こされます。
まず、尿路閉塞(主に尿道がつまり排尿できない状態)を起こしているのなら一大事です。緊急で治療を行う必要があり、様子を見てしまい手遅れになれば死亡したり、一生涯にわたって排尿障害や腎不全を持ち続けることになります。
血尿や頻尿などの膀胱炎の症状の場合は、尿検査で原因を確認しましょう。ストルバイトなどの尿石があるからといってそれが原因とは限りません。「とりあえず療法食を続けている」というような状況をよくお聞きしますが、何より
も最初にトイレを中心とした環境の確認と整備が重要です。その上で必要な療法食やサプリメントを使用しましょう。
当院ではトイレ環境の整備など、猫に最適な飼育環境をお伝えしていますのでお気軽にご相談ください。
普段の診察で猫の口の中を覗いていると、かなり高い頻度で歯ぐき(歯肉)に充血があったり、口の奥に口内炎があったりします。ほとんどの場合は無症状ですが、進行すると口臭が強くなり、さらに悪化すると口の中の充血・出血・ただれ、流涎(ヨダレ)、口を痛そうにする仕草が目立つようになり、十分な食事が摂れなくなると痩せてしまいますし、腎不全の発症を早めてしまうこともあります。
治療はまず、基礎になる病気を診断することから始まります。その病気の治療と並行して、抗生物質や消炎剤で口腔内の環境を改善します。治療に対する反応が悪く、一度治っても再発を繰り返す難治性の口内炎では、全ての臼歯(奥歯)を抜歯する全臼歯抜歯療法を検討します。様々な治療で改善が見られない場合の根治治療として当院でも実施しており、高い有効性を確認していますが、状態が悪化してからの実施は術後腎不全のリスクを高めますし、一部の猫では抜歯の効果があまり出ないこともあるため、しっかりと状況を把握した上で治療方針を決める必要があります。
以前は『慢性腎不全 Cronic renal failure:CRF』と呼ばれ、やや末期的な腎臓の病気というニュアンスが強い表現でしたが、ヒトの医療界での提唱もあり、現在は全身と密接にかかわり合う腎臓の病気という、もっと広い意味合いで、『慢性腎臓病Chronic kidney disease:CKD 』と表現したほうがいいんじゃないか変化してきました。猫では10歳を超えるとその発生率が急増するため、定期的なチェックを行い、早い段階で慢性腎臓病と診断し、対処していくことが望まれます。
現在、犬と猫の慢性腎臓病の進行具合は、IRIS(アイリス)分類というものが一般的に用いられて評価されています。いたってシンプルな分類で、血液検査のクレアチニンの数値でステージを決めます。血圧測定や尿検査も勧められます。
治療に関してはステージ分類に従って進めていきます。1〜4のどのステージにあるかで基本の治療が変わってくるため、詳しい内容を知りたい方は院長ブログ -腎臓病-をご覧ください。2017年春に発売された猫慢性腎臓病治療薬のラプロス錠はステージ2と3の猫が対象となっており、新しい腎臓病の治療法として注目されています。
甲状腺の過形成や腫瘍によって、甲状腺ホルモンの分泌量が過剰になる病気です。中高齢の猫(7〜20歳)の猫に多く発症します。発症率は7歳以上の猫で10%を超えるという調査結果が出ています。血液検査で血液中のホルモン(T4)の濃度を測定するだけで診断できます。
甲状腺機能亢進症は有効な予防方法はありません。
治療方法は以下の3つの選択肢があります。
・手術で腫大した甲状腺を摘出する外科的な方法
・甲状腺ホルモンの合成を阻害する薬を継続して内服する内科的方法
・療法食を継続して食べる内科的な方法
病態が悪化してくると急激に食欲や活動性が低下することがあり、心臓や腎臓など様々な臓器に影響が出てきます。早期発見・治療により症状の悪化を抑えることが可能で穏やかな生活を過ごさせてあげることができます。7歳を過ぎたら定期的に健康診断をして、血液検査にT4の項目も追加しましょう。
犬の糖尿病は人間の1型糖尿病に、猫の糖尿病は2型糖尿病に似ていると言われています。治療にはインスリン療法、食事療法、経口血糖降下薬がありますが、猫では犬よりも食事療法や経口血糖降下薬が効果的な場合があります。
猫の糖尿病では、腎症や白内障などの合併症が少なく、血糖値を100~300mg/dlにコントロールし、末梢神経障害を防ぎます。また、適正体重を維持して症状の改善を目指します。治療には食事療法が重要で、インスリン療法や経口血糖降下薬が使われることもあります。
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