犬の会陰ヘルニア
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これらは「会陰ヘルニア」のサインかもしれません。特に去勢手術をしていない7歳以上のオスの子に多い病気です。放置すると少しずつ悪化し、命に関わる状態になることもあります。
気になる症状があれば、早めにご相談ください。
会陰ヘルニアとは、肛門のまわり(会陰部)の筋肉が弱くなってすき間ができ、そこから直腸や脂肪、ときには膀胱や前立腺などがお尻の皮膚の下へ飛び出してしまう病気です。
肛門のまわりには、骨盤の出口をふさぐように「骨盤隔膜(こつばんかくまく)」と呼ばれる筋肉の壁があります。この壁が薄く弱くなると、いきんだときの圧力に耐えられず、お腹の中のものが外へ押し出されてしまいます。
飛び出した直腸は袋状に広がり、そこに便がたまるため、「出したいのに出せない」状態になります。いきむほど筋肉のすき間は広がるため、自然に治ることはなく、時間とともに少しずつ進行していきます。
会陰ヘルニアの大部分は、去勢していない中高齢(7歳以上)のオス犬に起こります。メス犬や猫にはまれな病気です。
ウェルシュ・コーギー、トイ・プードル、ミニチュア・ダックスフンド、マルチーズ、ペキニーズ、ボストン・テリア、パグ、シーズー、雑種など。小型犬から中型犬に多くみられます。
・男性ホルモンの影響:去勢していないオスに多いことから、ホルモンが筋肉を弱くする一因と考えられています
・加齢による筋肉の衰え:年齢とともに骨盤隔膜の筋肉が薄くなります
・慢性的ないきみ:便秘、下痢、前立腺肥大、膀胱炎などで、日常的に強くいきむことが負担になります
・前立腺の病気:前立腺が大きくなると排便時にいきみやすくなり、発症・悪化のきっかけになります
いくつかの要因が重なって発症すると考えられており、はっきりとした原因はまだ完全には解明されていません。
初期はお尻の横が少し膨らむ程度で、痛みもなく気づきにくいことがあります。進行すると、次のような症状がみられます。
・肛門の横の膨らみ(片側から始まり、両側に広がることもあります)
・排便困難、しぶり(何度もいきむ)、便秘
・細い便、少量の便が何度も出る
・膨らみを押すと便が出てくる
・食欲や元気の低下、嘔吐
おしっこが出ない、出にくい場合は緊急です。膀胱がヘルニアの穴に入り込んで折れ曲がる「膀胱反転」が起きている可能性があります。尿が出ない状態が続くと、半日〜1日ほどで急性腎不全など命に関わる状態に陥ることがあります。
膨らみが急に大きく硬くなった、ぐったりしている、吐いている、という場合も、時間外でもすぐにご連絡ください。
会陰ヘルニアは、触診と直腸検査でほぼ診断できます。そのうえで、飛び出している臓器や全身状態を確認するため、必要に応じて以下の検査を行います。
| 検査 | わかること |
|---|---|
| 視診・触診 | お尻の膨らみの位置・大きさ・硬さ |
| 直腸検査(肛門からの指診) | 筋肉のすき間の大きさ、直腸の変形、便のたまり具合 |
| レントゲン検査 | 膀胱や腸の位置、便の量、前立腺の大きさ |
| 超音波(エコー)検査 | ヘルニアの中身(膀胱・前立腺・脂肪など)、前立腺の状態 |
| 血液検査 | 腎臓の働き、麻酔をかけられる体の状態 |
高齢の子が多いため、手術前には心臓や腎臓などの全身の状態もしっかり確認します。
会陰ヘルニアは、手術で筋肉のすき間を閉じることが根本的な治療です。薬や食事で症状を和らげることはできても、すき間そのものは治りません。
・便を柔らかくする薬やお食事、浣腸、摘便(指で便をかき出す処置)
・尿が出ない場合は、カテーテルで尿を抜く応急処置
高齢や持病で麻酔のリスクが高い場合に選ぶことがありますが、症状は少しずつ進むため、多くの場合は手術をおすすめしています。
弱くなった筋肉のすき間を、周囲の筋肉や医療用メッシュなどで補強して閉じます。状態に合わせて、以下を組み合わせて行います。
・ヘルニア孔の整復:飛び出した臓器をお腹の中に戻し、周囲の筋肉(内閉鎖筋など)を移動させてすき間をふさぎます。筋肉が非常に弱い場合は、医療用メッシュで補強することもあります
・去勢手術:再発予防と前立腺の縮小のため、同時に行うのが一般的です
・腹腔内の固定術:膀胱や腸が再び飛び出さないよう、お腹の中で固定する手術(結腸固定・膀胱固定など)を併用することがあります
両側にヘルニアがある場合は、片側ずつ日をあけて手術することもあります。
症状をうかがい、触診・直腸検査・画像検査で状態を確認します
血液検査などで麻酔の安全性を確認し、手術内容・費用・リスクをご説明します
朝ごはんを抜いてご来院いただきます
痛みの管理と排便・排尿の確認を行います
お薬をお渡しし、【約2週間後】に抜糸と経過確認を行います
・エリザベスカラーをつけ、傷口をなめたりこすったりさせないでください
・便を柔らかく保つため、処方のお薬やお食事を続けてください
・散歩は短めにし、激しい運動は抜糸まで控えてください
・排便・排尿の様子(回数、量、いきみ)をよく見てあげてください
傷口の感染や腫れ、一時的な排便時のいきみ、まれに便失禁や後ろ足の神経への影響などがあります。また、反対側や同じ場所での再発が起こることもあります。気になる変化があれば、早めにご連絡ください。
会陰ヘルニアの予防で最も効果が期待できるのは、若いうちの去勢手術です。男性ホルモンの影響を抑え、前立腺肥大の予防にもつながります。
あわせて、日頃から次のことを心がけましょう。
・便秘や下痢を放置せず、早めに治療する
・排便・排尿の様子を毎日チェックする
・適度な運動と体重管理で、筋力を保つ
・シニア期(7歳以上)は定期的な健康診断を受ける
去勢手術を迷っている方も、メリット・デメリットを含めてお気軽にご相談ください。
手術をしないとどうなりますか?
すき間は自然には閉じず、少しずつ広がっていきます。便秘が悪化するほか、膀胱が入り込むと尿が出なくなり、命に関わる状態になることがあります。
高齢でも手術はできますか?
術前検査で心臓や腎臓などの状態を確認し、安全に麻酔をかけられるか判断します。年齢だけで手術ができないとは限りませんので、まずはご相談ください。
去勢手術も一緒に必要ですか?
再発予防と前立腺を小さくするため、同時に行うことをおすすめしています。
再発することはありますか?
手術をしても、反対側や同じ場所に再発することがあります。術後も排便の様子を見守り、定期的に診察を受けてください。
費用はどのくらいかかりますか?
片側か両側か、併用する手術、入院日数によって異なります。目安は55万円〜です。詳しくは診察時にお見積りをお出しします。
猫やメス犬もなりますか?
まれですが、起こることがあります。お尻まわりの膨らみや排便の異常があれば、性別や動物種に関係なくご相談ください。
会陰ヘルニアは、「年のせいで便秘気味なのかな」と見過ごされやすい病気です。けれども、早めに見つけて治療すれば、また気持ちよく排便できる毎日を取り戻せる子がたくさんいます。
お尻の膨らみや、いきんでも出ない様子が気になったら、どうぞお気軽にご相談ください。
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