いぬの手術実例10
dog_case10犬(トイプードル)、10歳、避妊メス、6.6kg
人の足が犬の足を蹴ってしまう格好になってから左後肢を挙げたまま
視診で左側根関節の過屈曲を確認。アキレス腱(腓腹筋・浅趾屈筋)の問題を疑診。
触診で屈伸時の左足根腫骨部分のクリック音を確認。また左足根関節の過屈曲(75°、通常は40°前後未満)を確認。
左浅趾屈筋腱の外方脱臼
左浅趾屈筋腱脱臼整復手術。やや拘縮が認められた浅趾屈筋腱の外側支帯を部分解放。次に、浅趾屈筋腱が外方にズレないように左腫骨に1.0mmのキルシュナーワイヤーをポジショニングピンとして刺入。浅趾屈筋腱の損傷していた内側支帯を非吸収性縫合糸で縫合。
定法に従い閉創し、外副子固定を行って終了とした。
手術直後から起立・歩行が可能に。手術後2週間の外固定。手術後4週間のケージレスト。
手術から1ヶ月半でほぼ元通りの歩行状態に回復し、問題なく生活できている。
浅趾屈筋腱脱臼は、犬の後肢のトラブルでは稀に認められる病気です。シェットランド・シープ・ドッグやコリー犬で比較的多く発生するとされていますが、どの犬種でも発生する可能性があります。
浅趾屈筋は、人の「アキレス腱」と同じような役割を果たします。犬のアキレス腱は主に、腓腹筋と浅趾屈筋から成り立っており、犬のアキレス腱の損傷としては、
・腓腹筋のみが断裂するパターン
・腓腹筋と浅趾屈筋が断裂するパターン
・浅趾屈筋の腱部が脱臼するパターン
などが想定されます。
いずれにしても早期の手術が必要になる場合がほとんどですので、何よりもスピーディーな診断が大切です。
時間が経ってしまうと手術の実施が困難になるため、「ただのびっこだから痛み止めで様子を見よう。」といった初期対応にならないように注意が必要です。
また、度々発生する足根中足骨部分のトラブルとの見分けも大切です。
当院ではまずは見落としのないよう確実な診断を心がけ、速やかに手術につなげられるよう取り組んでいます。
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