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BLOG院長の石川です。
今回は3月6日と7日に東京両国で開催されました「Intraumaコングレス in東京」について報告します。
国内外の整形外科のトップの先生方の超アドバンスな内容のセミナーです。
整形外科診療「も」しているという私のような獣医師からすると雲の上の先生方ですし、私なんかのレベルからすればかなり高難易度の内容でした。
それでも日常診療に活かさねば獣医療の発展はありませんので、本当にマニアックな話ですがご興味のある方は読んでみてください。
ここ数年は整形外科のセミナーを中心に勉強会に参加しています。
他の獣医の診療科に比べて獣医整形外科というものは「エビデンス」というものがほとんどありません。
エビデンスがあればそれに従うことが求められますが、従うべきエビデンスがハッキリしないので、整形外科手術をする獣医師の数だけやり方があるような状況です。「治れば何でもあり」といったカオスな側面があり、「治した」と言ったもん勝ちなところもあります。
ただ、この「治ればOK」というのが問題で、
本当にそれはベストなの? もしくはベターなの? というかそれは治したと言えるの?
という疑問がつきまといます。(私も手術後に毎回自問自答しています。夢でうなされます。)
今回のセミナーに登壇されるスペシャリストな獣医師の方々と、より良い治療を提供したいと考えて参加される意識の高い諸先生方が質の高い獣医整形外科の標準化を目指そうとしています。
小型犬に多発する膝蓋骨内方脱臼はもはやここで論じる必要がないくらい有名な疾患です。
なぜ膝蓋骨内方脱臼になるのかはまだ分かっていないのですが、グレードが進むにつれ大腿骨が歪み変形が進みます。この理由に、
・骨に問題がある→膝蓋骨脱臼→筋萎縮
・筋肉のバランスに問題がある→膝蓋骨脱臼→骨変形
という2つが考えられています。
日本大学の枝村先生が小型犬では筋肉バランスの問題があることが先でそのせいで骨の変形が進むのであろうという発表をされていました。(外国の先生方は骨の形態が問題じゃないの?という感じでした。)
320列マルチスライスCTを用いて立ったままの小型犬の後ろ脚の解析や、萎縮した筋肉の病理組織学的解析など、それが仕事とはいえ大学の先生は凄いな〜と感心しました。
ちなみに320列のCTだとトイプードルの全身を2秒くらいで撮影できるそうです。さらに3D化どころか4D化できる(3Dが動く!)そうで検査機器の進化を感じました。
これは衝撃的でした。
レッグペルテス(大腿骨頭壊死症)は6ヶ月〜1歳齢くらいの小型犬で時々発生する後ろ脚の跛行を特徴とします。
おそらく、
レッグペルテス=大腿骨頭切除手術
というのは全世界の獣医療の常識で、最近では人工股関節手術という選択肢が加わったという理解が共通した認識と思います。
大腿骨頭を切断し回転させて固定する
!? 何じゃそれは・・・? となりました。
日本獣医療の整形外科の先駆者であり権威である樋口先生の講演です。
「簡単だよ」とお話しされていましたが、少なくとも私には簡単な話ではありません笑
またレッグペルテスは経過を見ている間に大腿骨頭が再構築されて症状が消える例も結構あるとお話しされていました。
これは私も最近感じていたことで、ありがたいことに整形外科診療を希望されて多くのワンコたちを診察する中でレッグペルテスと診断した後に時間とともに跛行が消失して手術を回避できる例を複数例経験していました。
悩ましいことで、手術が必要と判断したときに現実的にその手術が実施可能な動物病院が限られることです。
会場で実施されている演者の先生は大分の樋口先生と、札幌の泉澤先生でした。 遠い。。。
(もちろん他にも実施されている先生は会場にいたのかもしれませんが)
もちろん当院で実施できれば良いですが、少なくとも股関節脱臼を手術によってコントロールできる技術レベルが必要で、すみません、私にはまだその力量がありません。
※注意点としては、現状の獣医療の標準としては手術が必要なレッグペルテスに大腿骨頭切除手術を行うことはおかしいことではないということです。一部の獣医師ができる手術でもそれを真似しようとした獣医師が失敗するとなればそれは「標準的治療」とは言えませんので。今後普及発展が進み標準的治療になるかどうかは分かりません。
改めて痛感します。
自分が日々、整形外科に限らず、診療で、
新しいことをやってますよ! 上手にできますよ!
なんてことは、優れた諸先生方が試行錯誤して結果を残してきたことをだいぶ遅れてコピーしてやっているだけだなと。やっと自分ができるようになっても、すでにずっともっと先のことにチャレンジしている獣医師が世界には想像以上にたくさんいるのだなと。
ということで謙虚に頑張らないとと思います。
全てのことをフォローできるわけではないでしょうが、各分野に常に先を行く人々がいて、それについていけるように。
ただし、私と当院の強みは「高い診断力」と「マルチな治療ノウハウ」ですので、強みに磨きをかけることも忘れずに頑張りたいと思います。
会場から撮った東京スカイツリーと街並みがとても綺麗でした。
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