いぬの手術実例01
dog_case01犬、9ヶ月齢、メス、2.0kg
ソファーから落ちてから右前肢を挙げたまま
レントゲン検査で右前腕(橈尺骨)骨折を確認
右前腕(橈尺骨)骨折、完全・短斜骨折、非開放
右橈骨骨折整復手術
(synthes社カッタブルロッキングプレート6穴1mm厚、1.5mmロッキングスクリュー使用)
手術直後から歩行が可能に。手術後1週間の安静の後、退院。
手術後4週間のケージレスト。
手術後2ヶ月で橈骨と尺骨の完全骨癒合を確認。
5本のスクリューのうちの内3本を全身麻酔下で除去した。
スクリューの部分除去からの3週間後のレントゲンでスクリューホールが骨により埋まったことを確認したため、治療終了とし、2〜3週間かけて運動量を増やして通常通りの生活に戻した。
犬の前腕骨折はトイプードルやポメラニアンなどの超小型犬種や、足が長くて細いイタリアングレーハウンドによく発生する骨折です。
治し方は一様ではありませんが、動物では人と違い手術直後から全力で足を使ってしまうためプレート固定が選択されることが多く、治療成績も安定しています。
これらの超小型犬種の骨は薄く細く、幅5mm以下、厚さ3mmほどのことも珍しくありません。ですので固定に使うことができるプレートは限定的で、また選択を誤ると再骨折をしてしまったり、最悪は骨がくっつくどころか溶けてしまうような事態に陥ります。そのような事情から超小型犬の手術では治療の難易度が上がり苦労します。
今回は1mm厚ロッキングプレート、および1.5mmロッキングスクリューを使用することで整復が可能でした。
ロッキングプレートは優れた固定力を誇る反面、強すぎる固定力から「ストレスシールディング」という固定部分の骨吸収を起こすことが報告されています。
本症例でも骨折部分の骨癒合が確認された後、速やかに固定のスクリューの数を減らすことでこのリスクを回避しました。
骨折治療は弱すぎる固定でも強すぎる固定でもうまくいかないため、手術計画の段階が非常に重要です。
一つの方法や道具に頼って行うと、思わぬトラブルに見舞われるため、柔軟に対応することができる機材の準備とノウハウが必要です。
BLOG