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BLOGバンコクの整形外科トレーニングから帰国後の最初の手術でした。
4日間ずっと膝のことを考えて、見て、手術トレーニングをしていたので、まさにその部位の手術です。
成長期に発生しやすい骨折として「成長板(骨端板)骨折」が挙げられます。
成長板って? と思う方も多いと思いますが、実は骨は、特に四肢の骨は、骨の端っこの方(関節近く)にある成長板で伸びていくのです。
この成長板は成長期(小型犬と猫では大体8ヶ月齢まで)はレントゲンで撮影すると黒く隙間として認識されますが、大人になるとレントゲンで成長板の位置はいまいち分かりづらくなります。
骨の隙間のように写る通り、成長板は「骨の一部なのに柔らかい」部分です。
なので、成長期の骨に強すぎる負担負荷がかかるとズレるように壊れることになります。これが「成長板骨折」です。
写真は車とぶつかって、成長板骨折をしてしまった7ヶ月齢体重5kgの犬のレントゲン写真です。2枚目の写真は比較のための問題がない足のレントゲンです。骨折している部分が分かりますか?
骨折部分を赤で囲みました。
これが「大腿骨」の「遠位」の「成長板」の骨折です。
他に交通事故の合併症がないことを2日間経過観察しながら、手術計画を立てて手術に取り掛かります!
手術後の写真です。3本のステンレスピン(キルシュナーワイヤー)で固定しました。
非常にシンプルな手術で、シンプルなだけに逆に難しい手術です。
このタイプの骨折はプレートなどの強力なインプラントが使えないのでごまかしが効きません。
いわゆる‘コツ’が必要で、ノウハウと経験が重要になる手術です。
今回は2本のピンで固定するクロスピン法の予定でしたが、予定よりも1本をやや細いピンにせざるを得なかったため固定強度を確保するために3本目を残す形に調整しました。
一般的な骨折と違い、成長板骨折手術後は3〜4週間の安静を保つことで速やかに癒合を達成できるため、元気一杯の成長期ですが頑張ってしっかりと安静にさせましょう!
注意点として、成長中の時期に成長板を固定する手術は、当たり前ですが骨の成長を邪魔します。つまりそのままにすると逆の足より短くなってしまいます。ですので骨がくっついたタイミングで入れたピンを除去するかどうかをしっかりと見極める必要があります。
ちなみにこの子の場合は、
・骨折時点で逆の正常な足の成長板がほぼ閉じていること
・骨癒合を達成する時点で8ヶ月齢に達していること
以上2点から、ピンを除去する手術は行わない予定です。ただし、中でピンが移動したり、ピンが入っている部分が刺激になって炎症や痛みの問題が出る場合は除去することになるでしょう。
改善しない跛行(びっこ)、骨折や脱臼や靭帯断裂などの手術でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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