ねこの糖尿病
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糖尿病は、インスリンが不足したり、インスリンが十分でもその働きが弱くなることで起こる病気です。猫が糖尿病になると、食べても細胞がブドウ糖を取り込めないため、常に食べ物を欲しがります。また、エネルギーを作れないため、体内のたんぱく質や脂質を分解してエネルギーを補おうとします。
人の糖尿病は4つのタイプがあります。
・インスリンが不足する1型
・インスリンは十分だが働きが悪い2型
・他の病気によるもの
・妊娠糖尿病
猫では約8割が2型糖尿病と考えられています。腎臓は血液中の糖分を尿に出さないようにしますが、血中のブドウ糖が多すぎると尿に漏れ出し、これが糖尿病と呼ばれる原因です。
糖尿病では、血液中に大量のブドウ糖があるため、血中の浸透圧が上がります。このため、ブドウ糖を薄めて浸透圧を下げようとする体の働きで水をたくさん飲む「多飲」が起こり、結果として尿の量が増える「多尿」になります。また、糖尿病ではブドウ糖からエネルギーを作れないため「多食」になり、体内のたんぱく質や脂肪が分解されて「体重減少」が見られます。
猫が糖尿病になると、これらの症状が出ますが、元気なことが多いです。しかし、糖尿病は続発する病気が危険です。
特に怖いのは「糖尿病性ケトアシドーシス」です。これは代謝が乱れて、脂肪の分解でできる「ケトン体」が過剰に増え、体のpHが急激に酸性になる状態(アシドーシス)です。この状態と高血糖による脱水が重なると、昏睡状態に陥り、命に危険が及ぶことがあります。また、糖尿病で末梢神経障害が進行すると、後肢がふらつくことがあります。
2型糖尿病では、肥満によりインスリンの働きが悪くなる「インスリン抵抗性」が起こります。インスリン抵抗性を引き起こす病気としては、甲状腺機能亢進症や(猫では少ないですが)副腎皮質機能亢進症が知られています。また、猫によく見られる慢性膵炎や口内炎も、炎症によってインスリン抵抗性が起こりやすくなります。特に膵炎は、インスリンを分泌する膵臓に障害を与えるため、糖尿病の発症に関連があると報告されています。さらに、ステロイドもインスリン抵抗性を引き起こすため、皮膚炎や口内炎の治療でステロイドを使用している場合、糖尿病にかかりやすくなります。
猫に上記の症状が見られる場合、糖尿病の可能性があります。診断には血液検査を行い、空腹時の血糖値が300mg/dL以上であれば疑われます。ただし、猫は興奮やストレスで一時的に血糖値が上がることがあるため、1回の検査結果だけで糖尿病と判断するのは注意が必要です。そのため、過去2週間の血糖値の変動を示す「糖化アルブミン」の検査や、尿検査で尿糖が陽性であれば糖尿病と診断します。また、尿検査ではケトン体の有無も確認し、「糖尿病性ケトアシドーシス」かどうかも調べます。
猫では、人の2型糖尿病とは異なりインスリン投与が必要です。インスリン製剤は複数ありますが、通常1日2回、食事に合わせて注射を行います。血糖値は食事によって大きく変動するため、治療初期や定期的に1日数回の血糖値測定が必要です。また、適切なインスリンを使用していても血糖値が安定しない場合、甲状腺機能亢進症、慢性膵炎、慢性腎臓病、慢性口内炎などが隠れている可能性があるため、それらの治療も重要です。
猫の糖尿病管理では、食事療法が非常に重要です。食事の目的は、食後の血糖値とインスリン分泌の変動を抑え、肥満を解消することです。そのため、低炭水化物・高たんぱく食が推奨されます。また、さまざまなフードではなく、一定のフードを与えることが望ましいため、市販の糖尿病用フードを利用すると良いでしょう。ただし、猫が毎日安定して食べることが最も大切で、慣れたフードの方が血糖管理に適している場合もあります。減量も重要ですが、急激な体重減少は避けてください。
猫の糖尿病治療には、動物用インスリン製剤が一般的に使用されます。この治療には定期的な通院が必要で、血糖値の変動に応じて獣医師が最適な投与量を処方します。そのため、猫の飼い主にとっては大きな負担があり、適切な投薬を続けることは簡単ではありません。
そこで、センベルゴ🄬が登場しました。これは猫の糖尿病による高血糖やその症状を軽減するための飲み薬で、日本初の1日1回の経口投与が可能な糖尿病治療薬です。飼い主は、猫の口に直接注入するか、少量のフードにかけて投与できるため、猫にとっても飼い主にとっても負担が軽減され、生活の質が改善されることが期待できます。
当院では、犬と猫の重症症例の診断と治療を数多く行ってきました。その経験を活かして、犬や猫の飼い主様を対象にセカンドオピニオンを提供しています。かかりつけ医の治療方針を確認したい方や、他の病院で診断がつかなかった方、治療経過が良くない方もお気軽にご相談ください。
確実に診断・治療の方向性を導きだすように尽力いたします。
セカンドオピニオンの診察はお話に時間がかかることが多いため、一般診療時間外(12:15〜16:00)の予約も受け付けています。通常の診察時間に来院することも可能ですが、その場合は当院の予約システムを利用することをお勧めします。
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