いぬの手術実例

椎間板ヘルニア

犬(ミニチュアダックスフント)、12歳、避妊メス

症状

前日の日中に後ろ足がふらついていた。その夜には後ろ足が歩けなくなった。

検査

レントゲン検査にて第13胸椎・第1腰椎間の椎間狭小化を認めた。

暫定診断

胸腰部椎間板ヘルニア グレード4(後肢の完全麻痺、排尿不全)

CT検査

胸腰椎に多発する椎間板ヘルニアを認めた。レントゲンで示唆された第13胸椎・第1腰椎間の椎間板ヘルニアが最も酷く、後ろ足の麻痺の原因はこの部分にあると判断した。

手術

左側椎弓切除術を実施した。脊椎神経を圧迫する椎間板物質を除去した。

治療経過

手術後1週間は完全麻痺に改善なし。術後2週間の抜糸時に後ろ足が動くように。手術後1ヶ月で自力での歩行が可能となった。

解説・コメント

「椎間板」とは背骨と背骨の間にある緩衝材のようなもので、「ヘルニア」とはラテン語で脱出を意味する言葉です。
椎間板ヘルニアとは「椎間板」が「脱出」し脊椎神経を圧迫する状態で、軽度では腰の痛みを示すだけですが、重度になると後ろ足の麻痺がおこり、さらに重症になると後ろ足の痛みすら感じない状態に陥ります。痛みだけの場合や軽度の麻痺の場合は安静を保つことで元どおりに改善することが多いのですが、痛みを感じない状態になった場合は一刻も早い手術での対応が必要になります。
本症例では椎間板ヘルニアの症状を発症後、時間の経過とともに悪化が見られたため、早期に手術を実施する必要があるだろうと判断し、来院当日にCT撮影を行った上で手術を実施しました。
手術前の悪化傾向もあり、手術後1週間ほどは後ろ足の機能はほとんど改善の兆しが見られませんでしたが、それを過ぎた頃から急速に改善し、手術後1ヶ月ほどでふらつきながらも歩行ができるまでに回復しました。
椎間板ヘルニアは何よりも獣医師による適切な状況の判断が重要です。状況を見極め、保存療法で改善が期待できるのか。それとも一刻も早い手術の実施が必要なのか。その判断により予後が大きく左右されるでしょう。