いぬの手術実例

マイボーム腺腫

犬(ミニチュアダックスフント)、12歳、避妊メス

症状

左眼の上まぶたにできものがある。

術前評価

ものもらい(麦粒腫・霰粒種)との鑑別のため、FNA(細針吸引生検)を実施。細胞診の結果、マイボーム腺腫もしくはマイボーム腺上皮腫が疑われたため麻酔下で切除した。

手術

四面切除法によってまぶたの内側から切除した。切除によって欠損した部分は形成し、縫合糸が眼球に当たらないよう細心の注意を払い縫合した。



確定診断

病理組織検査の結果「マイボーム腺腫」。取りきれているという診断であった。

治療経過

手術後2週間で抜糸した。その後は目の機能などにも問題なく良好に過ごしている。

解説・コメント

マイボーム腺腫とは、眼瞼(まぶた)の皮脂腺であるマイボーム腺から発生する犬で頻繁にみられる腫瘍です。基本は良性腫瘍ですので、手術で適切に切除することで完治する腫瘍です。腫瘤が小さいうちは無症状ですが、大きくなってくると出血したり、眼球に接触して涙が多くなったり結膜炎を起こしたりするようになります。
今回手術したわんちゃんでは、腫瘤のサイズが比較的大きく、腫瘤を切り取るとその分上まぶたが短縮してしまうため、手術後に右目と左目の形に差が出てしまう懸念がありました。
まぶたを一部形成することでこれを回避し、手術後1ヶ月ほどで左右差は分からなくなりました。
もしこれ以上様子を見て大きくなってしまった場合は通常の切除方法では対応できず難しい形成手術の併用が必要になってしまうため、様子を見すぎることなく、2〜3mmよりも大きくなるのであれば早めに切除することが勧められるでしょう。