症例

大腿骨頭壊死

犬(トイプードル)、1歳、オス

症状

生後半年くらいから右後ろ足のびっこ。右後ろ足以外の3本足で歩行。

過去の経過

動物病院を受診してレントゲンを撮影したが、治療するには専門医を紹介する必要があると言われ、そのまま様子を見ていた。

当院の検査

レントゲン検査


右大腿骨頭の変形(扁平化)、右後ろ足全体の骨が不透過性低下(骨密度低下)

当院の診断

右大腿骨頭壊死(レッグ・カルベ・ペルテス病)

ただし幼少期の骨頭部骨端板骨折などは否定できない。また、成長期に右後ろ足に体重をかけずに育ったため、骨の密度低下と著しい筋肉の萎縮を認める。

治療経過

右大腿骨頭骨頚切除を実施。

手術後半年が経ち、どちらが手術した足かわからないほどスムーズに歩行できるようになった。

解説・コメント

大腿骨頭壊死症(レッグ・カルべ・ペルテス病)は、主に小型犬種の若齢期(4〜12ヶ月齢)が発症する、太モモの付け根の骨が変形・壊死を起こす病気です。通常は片側のみに発生しますが、左右に見られる場合もあります。
先天性の要因が大きいと考えられており、大腿骨頭部に血液を供給する骨端動脈の異常により、骨頭部に血液が十分に供給されず、虚血性の変性・壊死を引き起こすとされています。
本症例で行った大腿骨頭切除術という手術は、小型犬〜中型犬の股関節の不可逆性の問題に多く行われる手術です。以前は大型犬では実施できないとされていましたが、現在では30kg前後までの犬種では実施することが可能と言われています。適切な手順で手術を行えば合併症も少なく、安定した手術結果を得ることができますが、実施の時期を遅らせると手術後の機能回復が悪くなることもありますので、適切に実施のタイミングを見極めることが重要です。
天白区以外にも近隣の名古屋市緑区や瑞穂区、名東区だけでなく、岐阜や三重の方からも手術のご相談を多くいただきますが、実際に実施するかどうかは別として、お気軽にご相談ください。