症例

犬のてんかん

犬(ウェルシュ・コーギー)、8歳、避妊メス

症状

他院でてんかんの治療をしているがうまくいかない

過去の経過

3年前にアジソン病と診断され、その1ヶ月後にてんかん発作を起こすように。アジソン病とてんかんの治療薬の使用を開始したが、月に1回はてんかん発作を起こし、年に数回群発発作を起こしていた。MRIも撮影したが特に異常はなし。

当院の診断

特発性てんかんを疑う、アジソン病(副腎皮質機能低下症)もあり

治療経過

アジソン病の治療にフロリネフの使用を継続。
処方され使用していた抗てんかん剤(ゾニサミド、レベチラセタム)を中止した。新規に古典的な抗てんかん剤であるフェノバルビタールをスタートした。
フェノバルビタールの副作用と思われる強い鎮静効果に悩まされるも、根気強く継続し、鎮静効果も軽減し頻発していたてんかん発作を全く起こさなくなり、今に至る。

解説・コメント

近年獣医学領域において、てんかんに対する治療薬の第一選択薬はゾニサミドになりつつあります。さらにレベチラセタムなどの比較的新しい薬も注目されています。しかしそれらの薬は比較的高額であり、また必ずしも効果が高いというわけではありません。
従来、犬のてんかんの第一選択薬であったフェノバルビタールは、肝障害や鎮静効果などの副作用などから徐々に用いられる機会は減ってきているものの、その抗てんかん効果は決して劣るものではありません。本症例のようにゾニサミドで発作を抑えられない場合に、フェノバルビタールを使用することで発作をコントロールすることができる場合も決して少なくありません。
本症例ではゾニサミドを使用しても発作が抑えられないためレベチラセタムが追加されていました。それも一つの選択肢でしょう。ただしレベチラセタムは非常に高価な薬で、その効果はまだ動物でははっきりしていません。当たり前ですがその治療費を負担するのは飼い主さんです。
当院では、考えられる治療法とその費用を客観的に提示して、それを飼い主さんとともに考え、選択し、一緒に治療に臨んでいくように心がけています。